子供のころ祖父母と暮らしており
祖母は漬物やい草でござを作り、祖父は野菜や米を作る農家で育ちました。
いつも食卓には手作りの漬物に新鮮な野菜とご飯が並び、
ござの作業場だった小屋や野菜畑は私の遊び場でもありました。
早くに家を出て、結婚、出産をし、祖父母が居なくなってからは、
漬物を食べることもなくなり、野菜や米も買うのが当たり前になってしまいました。
時間に追われる日々を過ごしていたある日、伝統工芸品に触れる機会があり
そこから手仕事・工芸品に関心を持ちました。
伝統工芸品の歴史や工程を知るにつれ、なぜか祖父母のことを思い出しました。
手作りの漬物や野菜やい草の香り、土のにおい、農作業をする祖父母の姿、
幼少の私に優しく教えてくれるしわしわの大きな手、
その時の情景が一気に蘇り、懐かしくて温かいきもちになりました。
ものは違うけれど、その日々の作業は祖父母が子供のころからあるもので、
代々教えられてきたものだったのだろうなと歴史を感じさせられ
祖父母が伝え、守っていきたかった思いがわかったような気がしました。
伝統工芸品は高価でなかなか沢山手にできるものではないけれど、
職人の方々の技術や出来上がるまでの時間を知れば、高価なのも納得で、
何よりもひとつひとつ長く大切に使いたい愛着のわくものになっています。
私には子供に伝えられる家庭の味などなく、
今となっては祖父母から教われなかったことを残念に思いますが、
その代わりに伝統工芸品や手作りのものに触れさせ教えていくことで、
文化の価値や手仕事のすばらしさを伝えていきたいと思います。
それを次の世代へ、
そのまた次の世代へ繋げていってくれることを願いながら…
a.m