久留米絣に魅了され、儀右ヱ門のお仕事をし始めた1996年。
1996年〜2023年。28歳〜55歳までの27年間、いろんな絣服を着てきました。改めて気付いた着続けている服、それが、一番最初に作った手織りのワンピース。(小川内龍男作)
久留米絣でワンピースを作るならと決めていたデザインの要素は、着物の延長線上の直線立ちのカフタンデザイン、袖にマチ、藍染、手織り、両脇スリット、見返しや袖マチやポケットの袋布は配色というものでした。
久留米絣の業界に入った時、まず機屋さんに連れて行ってもらい、手で織られている布を間近で見て感動したのを覚えています。
時代と反比例したスローな世界観は忘れる事ができません。
1996年頃の当時は、携帯電話を持ち始め、アップルコンピューターを初めて買い、デジタルな社会になろうとしている今で言う新時代になろうとしている時代。
久留米絣の世界は、その新時代とは真逆のアナログでゆっくりな世界。常に真逆の魅力に取り憑かれてた自分にとっては毎日が刺激的で楽しい毎日でした。
民藝なものとアウトドアなテイストをミックスしたファッションが大好きで、久留米絣のワンピースにレギンスにパタゴニアのアウター、足元はビルケンシュトックのサンダル。というスタイリングがカッコよく思えていた時代でした。ゆっくりなアナログなもの作りの久留米絣と機能性重視のハイテクなアウトドアテイストのマッチング。
28歳という年齢には少し高価な久留米絣を身にまとい、カジュアルダウンさせてファッションとして着ていました。
55歳になった今でも、カジュアルダウンさせるファッションは大好きです。ワンピースの下にはとろみのあるパンツをあわせたり少しエレガントなカジュアル、イージーエレガンスを楽しんでいます。アウターは軍物などで大人なワークウエアスタイリングが今は好みです。
久留米絣という素材は、27年という年月が経っても持続可能な布。
それと同時に儀右ェ門のもの作りは、頑丈。
久留米絣という素材は小幅の織物なので、無駄のない型紙と縫製とデザイン指示を完璧にやる事が非常に重要なのです。久留米絣の作成と同じ綿密なデザインの話し込みと計算が儀右ェ門の物作りなのです。
久留米絣の物作りの考えと儀右ェ門の物作りの考えは同じだとつくづく感じます。
一言で言うと知恵の結集。
アイデアを出し、より複雑に、より効率的にできる方法を生み出し、今までにないやり方を好んだり、とにかく考えぬいて、不可能を可能にする知恵の集団の物作り。ひとつひとつの指示が細かく、針目、縫い代の始末、色糸、研究心の塊の物作り。
長年の仲間、久留米絣の機屋さん、縫製工場の皆さんの、あうんの呼吸と話し込み、それこそが儀右ェ門の久留米絣の物作りを生み続けてくれているんだなと実感しています。これからも日々感謝をしながら、お客様お一人お一人の長く使い続けられる定番商品を作れるように頑張っていきたいです。
久留米絣デザイナー 藍子